眼鏡産業活性 ~福井県鯖江市~(前半)

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2012年はレンズに入る青色光をカットする「ブルーカットコート」の爆発的な人気や各社の「ヘッドマウントディスプレイ」の開発・発売など、眼鏡がアイウェアへ進化し、眼鏡の価値が高まった一年でした。今回は身近にある理科「眼鏡」に注目していきます。

福井県鯖江市をご存知ですか?メガネフレームの国内シェアは約96%、世界シェアは約20%を占めている世界に誇る都市。一言でいうと「眼鏡の聖地」です。産地の歴史をさかのぼると明治38年に創始者と呼ばれる増永五左衛門が農閑散期の副業として眼鏡枠作りに着目し各地より職人を招き、若者に眼鏡の製造技術を伝えたことが始まりと言われています。昭和50年代に、世界で初めてチタンを用いたメガネフレームの製造技術を確立に成功し、全世界に広がりました。

モノづくり(製造技術)や地域活性の活動を知りたく佐賀県で地域活性の最前線で活動されるみなさんと一緒に福井県鯖江市に行きました。今回は伺ったのは4か所。眼鏡の修理工場るねっとさん、めがね材料商社のキッソオさん、電脳メガネサミット(イベント)田中眼鏡さん。前半では「るねっと」さんと「キッソオ」さんを、後半では「電脳メガネサミット」と「田中眼鏡」さんについてレポートします。

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日本に欠かせないモノづくり。まず最初は眼鏡の修理工場るねっとさんで、職人の技術を見学。「作り手」がいれば「治し手」がいなければモノが溢れ返り使い捨ての時代が訪れます。今回はあえて「治し手」の工場へ。ここには大越さんを始め多くのメガネドクターがいらっしゃいます。モノが溢れると使い捨てになりがち。しかしここでは修理を専門とし壊れためがねを培った経験と技術で甦らせてくれます。プラスチックは元よりチタンも修理可能。ここで大切なのは「治し手」は人の手であるということ。

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毎日数百もの眼鏡が全国各地より届きます。届く眼鏡はフレームが割れたり折れたりと様々。届いた眼鏡を検査し治療の方向性を決め修理に入ります。修理方法はレーザーでつけたりねじ抜きをしたりします。例えばチタンフレームでストメッキを剥してチタンフラックスやステンフラックスで結合し最後に磨きをかけ完成します。チタンは酸化していると結合できないので素人には難しい技術が必要。文字にすると簡単ですがこの中には職人の技術がちりばめられています。全行程もちろん手作業。修理の様子は圧巻です。素晴らしい「治し手」がいることで「作り手」が安心して作れると言っても過言ではありません。すごいぞ!日本!

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次はめがね材料商社のキッソオさん。あれ?眼鏡じゃないの?いったいこの写真はなんでしょう?実は眼鏡のフレーム素材から作られたアクセサリー。腕輪や指輪、ボタンに印鑑など、色合いと形は見る者を魅了します。初見では宝飾始めたのかと思いました。素材や技術、経験があればこそ、たくさんのアイディアが生まれます。眼鏡だけでなく本当に何でも作れるんですね。

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そのフレーム素材にはカラフルな色柄のセルロースアセテートシートが使用されています。なんだか聞きなれない言葉です。綿花とパルプから作られる植物繊維を加工し板状にしてます。植物繊維なので肌に直接つけても安全安心で温度が近いから冷たく感じない、強度もあることが特徴。人に触れるものですので、ここも配慮が行き届いてます。このプラスチック系素材はメーカーとしてトップクラスのマツケリー社(イタリア)などより仕入れていらっしゃるそうで、このマツケリー社は世界的ファッションブランドの半数以上が採用していると言われてます。

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写真はキッソオの吉川さん。素材の特徴を生かした新しいデザインとして、Dirocca(ディロッカ)が生まれました。マネできない技術「イタリア」と「眼鏡の聖地|鯖江」より生まれた製品。職人の手により色柄を組み立て、加工時の切り出し方により同じ柄が出来ず、全て1点もの。眼鏡同様は人の体温に近く肌にも馴染みやすい。そして、子どもから大人まで安心で安全なアクセサリーであり、何より培われた「日本の技術」であること。ここも大変大きいです。技術だけでなく、ぬくもりも感じることができる一品です。


【まとめ】
以前は「作り手」が生み出す時代。モノが飽和して以降、現在は「治し手」が加わり1点を安心して使える時代。技術は若手の職人へと伝統とともに受け継がれ、また新たな産業の発展へとみんなで進んでいることを肌で感じることが出来ました。モノづくりとはモノを支える人々で成り立っています。2012年ブームとなった「MAKER」。2013年は「日本の技術」をたくさん目にする一年になります。さらなる新しい価値が生まれていき発展することを期待しています。

 

【参照】
鯖江メガネファクトリー
鯖江の伝統とこれからがまとまったwebサイト。今回の記事以外にも多くの職人さんが紹介されています。是非ご覧ください。
【取材日】
2012年8月


MAKE 地域活性